辞典の魅力!【じてん・の・みりょく・!】

  • 辞典で遊ぶ

    本でできている辞典は、「あいうえお」順を知らないと使えません。でも、使えるようになると、いろいろ面白いことを知ることが出来ます。

    1頁に幾つぐらいの見出し語があるか、辞典によって違いますが、頁数を調べることで、たとえば「あ」で始まることばがだいたいいくつあるか、計算できます。ですから、「あ」から「ん」までのそれぞれの字で始まることばの数がわかります。どの字で始まることばが多いでしょうか。どの字で始まることばがいちばん少ないでしょうか。

    しりとりの必勝法でもあります。始まる字で一番少ないのは「る」です。「る」で終わることばを出すと、勝つことが出来ます。こういうことは、電子辞書では調べられません。

    一番少ないのは「る」ですが、次に少ないのは何か、知っている人はあまりいないと思います。実は「ぬ」です。

    一番多いのは何か。「し」で始まることばが多いのです。「し」には「じ」もあり、「しゃ」「しゅ」「しょ」の拗音とそれぞれの濁音があります。

    日本語は「あ」から始まり、「ん」はないので、「わ」で終わります。すると、「愛」で始まり「腕力」で終わる、と言われます。ほんとうはそうでもないのですが、愛で始まって腕力で終わるというのは、何となく人間関係のある部分を表しているようで面白いです。

    では、真ん中は何か。あかさたなはまやらわ、の順ですから、「な」行のあたりかなと思うと、いえいえ、普通の国語辞典であれば必ず、真ん中の頁は「せ」です。日本のことばの半分は、「あ」から「せ」までで始まります。前の方に偏っているのです。

    まんべんなくそれぞれの字から始まっているわけではないのです。そんなことも、本の辞典を調べるとわかります。

    「あいうえお」は行ですが、「あ」段、「い」段というように5つの段に分けることもできます。それでは、この5つのうち、どれが多いでしょうか。少ないのはどれでしょう。実際に調べてみるといいです。

    ふつうは、「あ」段と「お」段が多いように思いますが、「い」段が案外多いのです。これは、「い」段に、拗音の言葉がふくまれるからです。でも、「きゃ」「きゅ」「きょ」は、音から考えると、「あ」段、「う」段、「お」段なのではないでしょうか。すると、順番は変わるかもしれません。

    国語辞典ではこのようですが、人名事典や外来語辞典ではどうなるでしょうか。どうして違うのでしょうか。夏休みの自由研究になるかもしれません。

    こんなふうにことばについて調べてみると、国語は面白くなるのではないでしょうか。

    2021年2月22日

  • 杏林大学外国語学部教授 金田一秀穂

    金田一秀穂

    上智大学卒業。東京外国語大学大学院修了。ハーバード大学客員研究員などを経て、現在は杏林大学客員教授。専門は日本語学。祖父は金田一京助。父は金田一春彦。
    明快で楽しい日本語解説はメディアでもおなじみ。